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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

二つ三つ冗談を言って、わたしはそのまま行きかけると、野童は曲り角まで追って来て、そっと訊いた。

「あなたは今、冬坡君を何か調べておいでになったのですか。」

「うむ、少し訊きたいことがあって……。君にも訊きたいことがあるのだが、今夜わたしの家へ来てくれないか。」

「まいります。」

わたしは家へ帰って風呂にはいって、ゆう飯を食ってしまったが、野童はまだ来なかった。そのうちに細かい雪が降り出して来たと、家内の者が言った。この春はここらに珍らしいほど降らなかったのであるから、もう降り出す頃であろうと思いながら、薄暗い電燈の下で炬燵にはいっていると、外の雪は音もなしに降りつづけているらしかった。

九時過ぎになって、野童が来た。いつもは遠慮なしに炬燵にはいって差向いになるのであるが、今夜はなんだか固くなって、平生よりも行儀よく坐っていた。炬燵にはいれと勧めても、彼は躊躇しているらしいので、わたしは妻に言いつけて、彼に手あぶりの火鉢をあたえさせた。

「とうとう降り出したようだな。」と、わたしは言った。

「降って来ました。今度はちっと積もるでしょう。」

「さっきの芸妓はなんという女だね。