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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

」

「あなたも釣りですか。」と、僕は訊いた。

「いいえ。」と、言ったばかりで、彼はすこしく返事に困っているらしかったが、やがてまた笑いながら言った。「虫を捕りに来たんですよ。」

「虫を……。」

「近所の子供にもやり、自分の家にも飼おうと思って、きりぎりすを捕りに来たんです。まあ、半分は涼みがてらに……。あなたの釣りと同じことですよ。」

きりぎりすを捕るだけの目的ならば、わざわざここまで来ないでも、もっと近いところにいくらでも草原はあるはずだと僕は思った。勿論、涼みがてらというならば格別であるが、それにしても彼は虫を捕るべき何の器械をも持っていない。網も袋も籠も用意していないらしい。すこし変だと思ったが、僕にとってはそれが大した問題でもないから、深くは気にも留めないでいると、市野は芒をかきわけて僕のそばへ近寄って来た。

「そこに浮いているのは幽霊藻じゃありませんか。」

「幽霊藻ですよ。」と、僕は水のうえを指さした。「今じゃあ怖がる者もないでしょうね。」

「ええ、われわれの子どもの時と違って、この頃じゃあ幽霊藻を怖がる者もだんだんに少なくなったようですよ。しかしほかの土地にはめったにない植物だとかいって、去年も九州大学の人たちが来てわざわざ採集して行ったようですが、それからどうしましたか。