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ぎもんのきんかい
疑問の金塊
海野 十三
「キング」1934(昭和9)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页
刑事は擽ったそうに苦笑した。恐らくあの有名な「銀座の金塊事件」を知らない人はあるまいが、事件というのは今から十日ほど前、銀座第一の花村貴金属店の飾り窓から、大胆にもそこに陳列してあった九万円の金塊を奪って逃げたという金塊強奪事件である。犯人は前から計画していたものらしく、人気のない早朝を選び、飾窓に近づくと、イキナリ小脇に抱えていたハトロン紙包の煉瓦をふりあげ、飾窓目がけて投げつけた。ガチャーンと大きな音がして、硝子には大孔が明いたが、すかさず手を入れて九万円の金塊を掴むと、飛鳥のように其の場から逃げ去った。それから十日目の今日まで犯人は遂に逮捕されない。なにしろ早朝のことだったから、目撃した市民も意外に尠い。手懸りを探したが、一向に有力なのが集らない。事件は全く迷宮に入ってしまった。警視庁は連日新聞記事の巨弾を喰って不機嫌の度を深めていった。その際に本庁の強力犯の二刑事が、はるばる横浜まで遠征して来たのは、誰が考えたって、ハハア金魂事件のためだなと気がつく。
「そう信用して下さるのなら、話はまた別の日に願いましょう。今夜はこれで、だいぶ更け過ぎていますからネ」