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ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页
世にも馬鹿馬鹿しい事柄を、さも仔細らしく、やかましい学説入りで説明するんだからな、そんな君、人殺しを胴忘れするなんて、間抜けた話が、どこの世界にあるものか。ハハハハハハ。しっかりしろ。君は実際、少しどうかしているぜ」
「まあまて、話をしまい迄聞いてから何とでもいうがいい。おれは決して君の所へ冗談をいいに来たのではない。ところで、猫の鳴声を聞いておれが思出したというのは、あの晩に、同じ様に猫が騒いだ時、すぐ屋根の向うにある松の木に飛びつかなかったか、きっと飛びついたに相違ない、そういえば、何だがバサッという音を聞いた様にも思う、ということだった……」
「いよいよ変だなあ。猫が松の木に飛びついたのが、死因の本筋とどんな関係があるんだい。どうも僕は心配だよ。君の正気がさ……」
「松の木というのは、君も知っているだろう。おれの家の目印になるような、あの馬鹿に背の高い大樹なんだ。そして、その根許の所に親父の腰かけていた、切石がおいてあるのだ。……こういえば、大概君にも、話の筋が分っただろう……つまり、その松の木に猫が飛びついた拍子に、偶然枝の上にのっかっていたあるものにふれて、それが親父の頭の上へ落ちたのではないかということだ」