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はっくつしたびじょ

発掘した美女

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第四号」1953(昭和28)年11月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 29 页

青空文庫

この絶好機に初音サンの心を捉えなければならない、と心に期して、その夜は明方ちかくまで旅行案内書や地理歴史考古学等の書物をひッくりかえした。

家業は人まかせで生涯のヒマ人だから、競馬もやる、釣もやる、絵や文学にもこる、たしかに考古学なぞにもチョッピリ興をいだいたりもした。何から何まで一知半解であるが、チリもつもれば何とやらで、一知半解のウンチクは頭にあふれ、書物は書斎にあふれている。あれでもない、これでもない、と寝もやらず探すにはオアツライ向きにできていたが、神様もその心根を憐れみ給うたのか、明方ちかくなって、

「これだ。これがいい!」

と膝を打って叫ぶようなのが見つかったのである。それが運命の黒滝温泉。関東のさる名山の山中深きところである。その温泉の海抜は七百九十何メートルとある。その附近の山中からは非常に多くの巨大な石器が発掘発見されている。その巨大なこと。大きな石ウスとか、舟の形をしたものとか、または何用に供したかワケの分らぬ巨石とか等々々。また、あたりは無数の瀑布にかこまれ、大なるは二十余丈、また底の知れないホラ穴もあるし、集団的な古代人の居住趾もあるらしい。