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はっくつしたびじょ

発掘した美女

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第四号」1953(昭和28)年11月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 29 页

青空文庫

それらはいつの頃か無名の人々に発見されたままで、学界にかえりみられもせず、名のある人に調査されたこともない。一知半解のウンチクも馬脚を現す心配がないばかりか、ことによると、彼ですらも何かの新発見ができるかも知れない処女地のようであった。

一夫もそれをきいて、よろこび、

「温泉旅館は必ずあるんでしょうね」

「そのあたりには霊泉が散在していて、各々旅館はあるらしいよ。ただ、自炊客を主とす、と書かれている」

「それじゃア、ウィスキーや御馳走をウンと持ちこみましょう。ロマンチックにやりましょう。ウンと気分をだして下さい」

いろいろ用意をととのえ、黒滝温泉に向って出発した。

原始の宿

国鉄から私鉄に乗りかえて山の登り口の侘しい町で降りた。駅前のタクシーに黒滝行きをたのむと、運転手が頭をかいて、

「今日はバスが運転中止でしてね。雨が降るとバスが通れなくなるんですよ。だからハイヤーもムリなんですがね」

「せっかく東京から学術調査に来たんだからムリしたまえよ。こちらは考古学の大先生、この御婦人が助手で、ボクがチンピラ弟子のカバン持ちさ」

出発前に旅行中の身分を定めてきたのである。