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しろいあさ

白い朝

豊島 与志雄

――「正夫の童話」――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,920 字 · 35 页

青空文庫

」

囁くような声で、チビがひょっこり出てきました。

正夫は黙っていました。

「いいことがあるよ。今晩、うまい果物がたくさん食べられるよ。女のひとが来たろう。あの人が持って来てるんだよ。」

「誰のところへさ。」

「もちろん、おじさんとこへだ。けれど、君が食べていいのさ。就職運動のお遣物なんだ。」

「そんなもの、受取っちゃいけないんだろう。」

「ばかだな。君のおじさんは、そんなちっぽけな量見じゃないんだ。持って来た物なら、何でも受取るよ。そこはおっとり出来てる。僕は好きさ。だが……。」

チビは耳をかきました。

「なんだい。」

「実は、就職運動なんかより、もっと大変なことを待ち受けていたんだが……さっき、そら、表の木の上でね……。」

それが、へんに不吉に響きます。正夫は身をのりだしました。チビは得意げに眼をぱちくりさして、そして話しました。

芝田さんが、表面は調査課長として、内実は幹部の一人として関係してる、某塗料株式会社があります。以前のことですが、ここでも、芝田さんらしい話題が残っています。この会社の株券が、百株ほどまとまって売物に出た時、芝田さんは借金をしてそれを買い取りました。