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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
これはいったいどういうことなのか――前こごみになっている彼女の肩や、紅と紫の合せ帯をしている腰のへん――もうそこにはきのうまでの幻影はかげを消していた。いつもそこで岐れ道になっている田甫のあいだにはおりてゆかないで、彼女はきづかぬ風に、土堤道をさきへ歩いてゆく。そのへんからは土堤の左右に杉の古木が並木になり、上熊本駅へゆく間道で、男女の逢引の場所として、土地でも知られているところだったが、三吉にはもはやおっくうであった。
「あの、深水さんがね、貴方のことを――」
夕闇の底に、かえってくっきりとみえる野菊の一とむらがあるところで、彼女はしゃがんでそれをつみとりながら、顔をあおのけていった。
「――青井は未来の代議士だって、妾も、信じますわ」
こいつ、ぱっぱ女学生だ――野菊の花をまさぐりながら、胸のところに頭髪をよせてきたとき、三吉は心の中でさけんだ。
――もう、何ものこらなかった。病みあがりのような、げっそりした疲労だけがのこっていた。彼女と別れてすたすた戻ってきてから二三日は唖のようにだまって、家の軒下で竹びしゃくを作っていた。
ある夕方、深水がきて、高島が福岡へ発つから、今夜送別会をやるといいにきて、