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はくとうのうた
白塔の歌
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页
方美貞がすぐ立上って、彼女の後を追ってゆきました。
感嘆の吐息と声が洩れました。客の一人の中年の婦人は涙を拭きました。そして柳秋雲と方美貞とが戻って来ないのをきっかけに、よい工合に食卓は見捨てられることになりました。
次の広間の片隅に、麻雀の一組が出来ました。方夫人と陳慧君と、歌のあとで涙を拭いた中年の婦人とに、方福山の隣席にいた老人が加わりました。
汪紹生が一人で庭の方へ出て行ったようでしたから、荘一清と高賓如とは連れ立ってその方へ行ってみました。
晴れやかな秋の夜で、星辰が美しく輝いていました。池のない広庭には、植込や置石が多く、築山の上の小亭にぽつりと電灯が一つともっていました。
高賓如は両手を差上げ伸びをしてから、冷かな批判の調子でいいました。
「今晩の宴会には、欠けたものが一つあったね。」
「何ですか、それは。」
「君のお父さんが来られなかったことだ。」
「父は近来、ここの人達をあまり好まないようです。」
「それは当然だ。然し、ここの人達にしてみれば、君のお父さんは最も大切な客だった筈だ。」
「なぜですか。」
高賓如は荘一清の方を振向いて、その真実怪訝そうな眼付を見て取ってから、いいました。