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はくじつむ
白日夢
豊島 与志雄
「新小説」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,672 字 · 23 页
もしそんなことになったら……。
そしてそういう気持が、まだすっかり納まりきらないでいる、その日の晩、私は友人と二人で或るカフェーにはいって、つい気になるまま、引越し以来の顛末を話してみた。そして実は、いつも真面目くさってるその友人から、きっぱりと心が落付くような言葉を、それとなく期待していた所が、友人は私が話し終えるのを待って、変に眼をぎらつかせながら云った。
「そりゃあ面白い。実を云うと、僕はその方面では常習犯でね、自分一人かと思って、少し心細がってた所だ。」
「常習犯だって?」
「まあそうだね。……ただ漠然と云ったのでは分るまいから、詳しくその気持を話してみよう。」
そして彼は、珈琲でぐっと喉を濡おしてあたりをじろりと見廻して、それから話しだした。
「君もよく知ってる通り、僕は一体陰気で無口で沈みがちな男だ。所がどうかした機会で、急に快活に陽気になることがある。その時の僕の心持は丁度、今まで曇ってた空が俄に晴れて、美しい日の光が一面に降り注いでくるようなものだ。そして僕は非常に愉快な軽やかな気持になって、大抵の用なんかは忘れてしまって、浮かれたように街路を歩き廻るのだ。