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はくもくれん

白木蓮

豊島 与志雄

「芸術」1947(昭和22)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 24 页

青空文庫

君も見たのかい。そんなら、声をかけてくれたっていいじゃないか。」

「しばらく立って見てたわ。でも、声をかける隙がないんですもの。」

「声をかける隙がない……なんだい、それは。」

「何と言ったらいいかしら……。まあね、二人で、心中の相談をしてるとか、そんな風で、声をかける隙がないのよ。」

「ばかだね、そんなことを……。」

「でも、わたしが男なら、喜美ちゃんと心中するかも知れないわよ。」

「ますます怪しからん。」

然し、桃代の言葉に、私はなにか不安なものを感じた。私の方についてではない。桃代の方についてであり、更に喜美子の方についてである。

私が黙って考えこんでると、桃代の方から打ち切るのだ。

「もうやめましょう、こんな話。……喜美ちゃん、どうしたのかしら。連れてくるわ。」

私は一人で飲むだけだ。

桃代は三味線を持って、喜美子を連れてくる。

「さっきのお詫びに、お稽古をしてあげるわ。梶山さんだから、いいでしょう。お座敷じゃないと思うのよ。でも、ほかのお座敷でなら、決していけないわよ。このお師匠さんが承知しないわよ。……何がいいかしら。梶山さんの……好きなもの……小鍛冶でもやりましょうか。