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はっけっきゅう
白血球
豊島 与志雄
「良婦の友」1921(大正10)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页
なお試みに、上下左右の張り坂を、指先でとんとん叩いてみたけれども、釘付もしっかりしているらしかった。所が、差伸べた手先と頭とを引込めた途端に、ふっと鼻先を掠める匂いのような、嫌な気がすっと漂ってくる心地がした。彼はぴしゃりと襖を閉め切った。
何とも云えない変な気持だった。彼は※(「勹<夕」、第3水準1-14-76)々に廊下へ出て、それから、押入の反対の側を見廻ってみた。其処は台所の煤けた壁だった。妙だな、と思う心が好奇心に変って、台所の揚板を二三枚めくって、押入の下に当る方を覗き込んだ。薪束の転ってる向うに、蜘蛛の古巣が破けかかっていて、黴臭い床下の地面が茫と横たわってるきりで、何等の異常もないし、少しの嫌な気も漂っては来なかった。
彼はぼんやり座敷へ戻っていった。
「如何でした?」という意味を眼付に籠めて、秋子は彼の顔色を窺った。
「何でもないよ。」と彼は自分自身にも云ってきかせるような調子で答えた。
がやはり、どうも腑に落ちなかった。薄気味の悪い変な押入だ! という気持が、頭の底にからみついてきた。
そこへ清が変梃なものを齎した。
或る夜のこと、電燈の光りが、潮の引くようにすーっと薄らいでいって、ぷつりと消えたかと思うと、またぱっとついた。