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はっけっきゅう
白血球
豊島 与志雄
「良婦の友」1921(大正10)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,538 字 · 24 页
「小学校にも通ってる晋吉が、あんなに喫驚するくらいですから、普通のことじゃありませんわ。」
晋作もさすがに一寸気を惹かれた。彼は怪力乱心をこそ語らなかったが、楽天家相当の偶然の機縁――それに多少の思想を交うれば、すぐに霊とか奇蹟とかになり得るもの――を否定しはしなかった。で試みに、女中部屋にはいって、あちらこちら歩き廻ったり、一寸屈み込んだりして、腕を組みながら、小首を傾げてみた。
廊下の障子と室の障子とで二重に漉された明るみが、北の高窓から射す光りで暈されていた。窓の外は隣家との境の亜鉛塀で、塀の上に伸び出てる桜の梢が見えていた。直接の日光が射さないせいか、室の空気が底冷たかった。まではよいが、押入の方から、何だか嫌な気が漂ってくるようだった。はっきり捉え所のない、変に気持ちが惹かされる、馬鹿げてるが打消せない、何とはなしに嫌な気だった。よく見るとその半間の押入の襖と柱との合せ目が、どちらか歪んでるせいか、上の方が五分ばかりすいていた。掌をかざしたが、別に隙間風がはいってる様子もなかった。襖を開くと、清の荷物や見馴れた古道具が、中に一杯押込んであった。