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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

第三篇 宝蛇

と申しました。ところが今一人はこれと反対に歯の根も合わぬような震え声で――

「美……美紅姫……が……お平常着のままで……寝台の中で……コ、コ、氷のように……冷たくなって……」

と云う内に床の上に座り込んでワッとばかりに泣き崩れました。

第三篇 宝蛇

十九 黄薔薇の籠

濃紅姫は昨夜夜通し、少しも眠る事が出来ませんでした。この頃自分のまわりに起ったいろいろの不思議な事や、恐ろしい事を考えながら、夜を明かしましたが、併しずっと奥の部屋に寝ていたのですから、その夜の中にどんな事が兄様や妹の身の上に起こったかという事は、まるで知りませんでした。そうしていよいよ夜が明けますと、お附の者に扶けられて湯に這入って、すっかり身体を浄めてお化粧をしました。先ず髪毛には香雲木という木に咲いた花の油を注ぎ、白百合の露で顔を洗いました。身には袖の広い裾の長い白絹の着物を着て、上に黒狐の皮の外套を重ね、頭に碼瑙の冠を戴いて、手に黄薔薇の籠を持ちました。そうして足に鹿の鞣皮の細い靴を穿いて、いよいよ支度が出来上りまして、これから食堂で皆とお別れの食事を喰べて、それからお伴の女中と一所に馬車に乗って、宮中に行くばかりとなりました。