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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
と叫びました。
馭者は心得て鞭を挙げて敬礼をしながら、手綱を取ってしゃくりますと、馬車は忽ち王宮の方へと走り出しました。
その時狂気のようになったお母様が駈け付けまして――
「あれ、濃紅姫。行ってはいけない」
と追い縋ろうとしました。馬車の窓からも濃紅姫が顔を出して――
「お父様。お母様」
と叫びましたが、お母様の方を紅木大臣が抱き留める……濃紅姫の方は三匹の白馬に引かれて見る見るうちに遠く遠く小さくなって、間もなく馬車のあとから湧き上る砂煙のために隠されてしまいました。
紅木大臣はいつの間にか気絶している公爵夫人をあとから駈け付けた女中に介抱させて、夫人の室に連れて行かせましたが、自身は只一人紅矢の室に這入って行きました。そこには青眼先生が鉄になった紅矢の死骸と氷になった美紅姫の死骸とを二つ並べてじっと睨み詰めたまま、枯れ木のように突立っていました。
紅木大臣は静にその傍に歩み寄って、じっと二つの浅ましい死骸の姿を見ておりましたが、やがて今まで堪えに堪えていた涙が一時に眼に溢れて、両方の頬を流れては落ち、流れては落ちました――
「紅矢、美紅……お前達はどうしてそんな姿になったのだ。