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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
その中で美留藻は香潮よりも余程水潜りが上手だったと見えまして、香潮よりもずっと先に水を蹴って、銀色の泡を湧かしながら、底深く沈んで行きましたが、沈むにつれて四周が次第に暗くなって、今まで泳いでいた魚は一匹も見えず、その代り今まで見た事もない、身体中口ばかりの魚だの、眼玉に尻尾を生やしたような魚だのが泳いでいます。しまいにはとうとう真暗闇になってしまって、遠くから蛍の火のように光る者が見えて来て、だんだんはっきりと傍へ寄るのを見ますと、人間の頭や、鳥の足や、狼の尻尾のような種々の形をした魚で、それが方々で青い提灯のように光ったり消えたりしまして、何だか様子が物凄くなって来ました。美留藻は恐ろしさの余り、よっぽど引き帰そうかと思いましたが、又考え直しまして――
「こんなに気が弱くては仕方がない。妾はこの間の夢が本当か嘘か、たしかめに来たのではないか。わざわざお役人様に願って、彼の石神の胸から出た鏡が、本当にあるのか無いのか、見に来たのではないか。もし鏡が本当にこの湖の底にあって、その上に彼の石神の歌の通り、宝蛇が見付かれば、いよいよこの間の夢は本当の夢で、妾は夢の中の美留女姫の生れ変りで、行く末は女王になれるのではないか。