轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひゃくしんのふ
百唇の譜
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,209 字 · 25 页
百人目の唇を
、まだ貴女のような美しい方に逢ったことは無い」
「…………」
「何んと仰しゃるか貴女のお名前は知りませんが――もう一度髪を延して、此世の歓楽を見尽す為に私と一緒に世の中へ踏み出して参りましょう――」
千代之助の言葉は次第に熱を帯びて双手は何時の間に尼のふくよかな膝の上へ掛って居りました。
百人目の唇を
「有難う御座います。そんなにまで仰しゃって下さるものを、何うしてお言葉に反かれましょう」
「ええ、それは、それは本当でしょうか」
「何んの嘘を申しましょう。けれども、今はこの通り御仏の御前に仕えて居ります。かりそめにも汚らわしい事があってはなりません。この庵の始末をして、髪を延してお後からお宿へ参りましょう」
何んとした事、美しい尼は思いの外早く珠数を捨てる気になったようです。
「有難う、私に取ってもこんな嬉しいことはありません。それではお言葉を胸に秘めて、後の日を待つとしましょう。が、たった一つ、私の言うことを聴き入れた証拠に起請を書いては下さるまいか」
千代之助は気の変らないうちにと押っかけます。
「え? 起請」
「と言っても筆で書く起請ではない。貴女の唇の紅をこの紙の上へ捺して貰いさえすれば宜いのです――」