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ひゃくあしちがい

百足ちがい

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页

青空文庫

「よう暫くだな、どうした」

などと暢気なことを云った。

「うん決心がついた、おれもやるよ――」

「――おれもやるって……なにを」

「なにをって、……むろん千本松の件さ、馬廻りのれんちゅうと例のことをやる件さ、おまえ知らないのか」

「――ええと、まあ掛けないか」

喜兵衛はこう云って自分から縁側へ腰を掛けた。

又四郎は聞いた。例の集団決闘は三月まえに済んでいた。両方に三四人ずつ負傷者が出たところを、両方の支配役が馬で駆けつけて中止を命じ、両方とも主謀者は五十日、他の者は三十日の謹慎という罰をくった。喜兵衛は主謀者の一人なので、このほどようやく謹慎が解けたところだ、ということであった。

そのとき又四郎がどんなに当惑したか、それは彼自身よりほかに知ることはできない。喜兵衛の話を聞き終ると、彼はやや暫くなにか考えていた。

「――すると、あれだね、……うう、つまりもう、みんな済んだわけだね」

「まあ済んだわけだね」

「――すると、つまり、もうその、千本松へゆく必要は、うう、ないわけだ」

「まあそうだろうね」

又四郎はそろそろと縁側から腰をあげた。だがそのまま帰るのもぐあいが悪い、喜兵衛は気まずく思っているかも知れない。