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かんごくべや

監獄部屋

羽志 主水

「新青年」1926(大正15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,909 字 · 12 页

青空文庫

今度は流石に今迄の様に変な女を御給仕に出すことは差控えたらしい。

午後一時に総員広場に集れの布令が廻って、時は愈目睫に迫った。山田は蒼白くなっては度々水で口を濡しながら「サア往こう」と昂然として言う。

三千人と一ト口に言うが、大したものだ、要所要所に上飯台の連中を配置し、寸分も足掻きを効かせまいと行届いた手配だ。然し此三千人の口には何様して手を宛てられるかと私は他人事ながら案じられて、背延びをして幹部の方を見たが、謹慎の象徴の様に固くなってるのが見えた丈だ。

山の主任が立上って、内務省から派遣された大河内参事官を紹介し、何か不平でも希望でもあらば申立てる様仰せられたから、其旨申伝えると述べて着席する。大河内参事官は、痩ッぽちの体に似合わず、吃驚する程の大声で訓示を始めた。良く透る歯切れのいい弁で、内容を平易く要領よく述立てる所は流石にと思わせた。当局に於いては虚心平気で実地の真情を審さに調査報告し、改良すべき点ありと認むれば、飽迄も之が改善を命ずるのである、腹蔵なく述るがよい、世評が嘘伝であって欲しいと思うと述べた。

参事官が椅子につくかつかぬに、私から三人目に居た山田が、何か述立てようとすると、直後に見張って居た帝釈天の谷口が、後から肩口を握んで小突いた、すると壇上の椅子に居た次席の偉丈夫山本さんが突