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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
つもりだから、じぶんといっしょにとゞまるものはとゞまるがよいが、おやたちが存命のものもあろうし、妻子を置いて来たものもあろう、そういうものはすこしもえんりょにおよばぬから早々に在所へ引き取ったがよい、罪なき人をひとりでもよけいころすことは本意でないと仰っしゃって、いとまを取りたいものには取らせ、人質などもそれ/″\ゆるしておやりになりましたので、おしろにのこりましたにんずはたといわずかでござりましても、みな/\いのちよりも名をおもんずるひと/″\でござります。わけても弥えもんのじょうどの、若狭守どのなど、おれき/\の衆は申すもおろかでござりますが、若狭どのゝ一子新五郎どのは十八歳におなりなされ、やまいの床にふせっておられましたのに、輿にかゝれておしろへはせつけられまして、「小島若狭守が男新五郎十八歳因二病気一柳瀬表江出張せざる也、只今籠城いたし、全二忠孝一」と大手の御門のとびらに書きつけられました。もっとお若いおかたでは佐久間十蔵どの、これは十五歳でござりました。利家公の聟でいらっしゃいましたので、まだ御幼少のことゝ申し、府中のおしろにはお舅さまがおいでゞすから、しのんであちらへおたちのきなされませ、なにも籠城あそばさずとも苦しかるまいとぞんじますと、御けらいがいさめましたけれども、いや