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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

/\、おれは小さいときから引きとられて養育を受けているうえに莫大な領地をたまわっている、その恩義のあるのが一つ、もしとしいえのえんじゃでなければ母への孝養に生きながらえるみちもあるが、舅のえんにすがって一命をつなぐのは卑怯だとおもうことが一つ、みょうじをけがせば先祖にたいしてもうしわけのないのが一つ、この三つの道理に依ってろうじょうするのだと申されて、討死のかくごをきめられました。また御定番の松浦九兵衛尉どのは法華の信者でござりまして、小庵をむすんで上人をひとり住まわせておかれましたところ、その上人もまつうらどのがろうじょうなさるのをきかれまして、あなたと愚僧とは現世のちぎりがふこうござりましたから、ぜひ来世へもおともをして報恩謝徳いたしましょうと申され、まつうらどのゝとめるのもきかずにおしろへたてこもられました。それから玄久と申すおひと、これは豆腐屋でござりました。もっとも以前はかついえ公のおさな馴染みでござりましたが、あるときかっせんにふかでを負いましたについて、このからだでは御奉公もなりかねますからおいとまをいたゞきます、もうわたくしも武士をやめて町人になりますと申されましたので、「そうか、それならお前は豆腐屋になれ」