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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
ごうけつのこゝろのうちもけっきょくは凡夫とちがわぬものなのでござりましょう。たゞわたくしはいったんのあやまちから一生おそばにおられぬような境涯におちましたけれども、太閤でんかはあのお方の父御をほろぼし、母御をころし、御兄弟をさえ串ざしになされたおん身をもって、いつしかあのお方をわがものにあそばされ、親より子にわたる二代の恋を、おだにのむかしから胸にひそめていらしったおもいを、とう/\お遂げなされました。いったいひでよし公はどういう前世のいんねんでござりましたか、のぶなが公のおん血すじのかた/″\をおしたいなされまして、まだこのほかにも蒲生ひだのかみどのゝおくがたにのぞみをかけていらしったと申します。このおかたは総見院さまのおんむすめ御でいらっしゃいまして、小谷どのには姪御におなりなされ、やはりお顔だちが似ていらしったと申しますから、おおかたそれゆえでござりましたろうか。わたくし、人づてにうかゞいましたのには、せんねん飛騨守どのがおかくれなされましたとき、殿下より御後室さまへお使いがござりまして、おぼしめしをつたえられましたけれども、御後室さまは一向おきゝいれがなく、かえっておなげきあそばしておぐしをおろされましたので、蒲生どのゝお家が宇都宮へおくにがえになりました