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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
それから二十七日のあさはやくろうじょうの侍どもをおあつめになり、ゆうざんわじょうを導師にたゝせて、長政公はせきとうのそばにおすわりなされ、御けらいしゅうの焼香をおうけになりました。みなのしゅうはさすがに辞退されましたけれども、たってのおことばゆえ焼香したのでござります。さてその石塔は、しのんで城からはこび出しまして、みずうみのそこふかく、竹生しまから八丁ばかりひがしの沖へしずめましたので、それを見ました城中のものどもは一途に討ちじにを心がけるようになったのでござります。
おくがたはちょうどそのとしの五月に若君をおうみなされ、さんごのおつかれで一と月あまりひきこもっていらっしゃいましたので、わたくしがしゞゅうごかいほう申し上げ、お肩やお腰をさすりましたり、せけんばなしのお相手をつとめましたりいたしまして、おなぐさめ申しておりました。左様でござります、ながまさ公は御きしょうはたけくいらっしゃいましたが、おくがたにはいたっておやさしゅうござりまして、ひるはいちにち命をまとにはげしい働きをなさりながら、おくごてんへおこしになりますと御きげんよく御酒をきこしめされ、何くれとおくがたをいたわってお上げなされて、お女中がたやわたくしどもへまでじ