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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
わたくし、じぶんの身よりもおくがたはどうあそばすおつもりか、いずこ迄もながまさ公とごいっしょにおいであそばすのか、五人のお子たちをいとおしゅうおぼしめしたら、また御りょうけんもおありになりはしないかと、こゝろではやきもきいたしましたが、そんなことをさしでがましゅう伺うわけにもまいりませぬし、それきりおこえもかゝりませぬので、ついつぎほがなくて、ひかえてしまったのでござりました。
それが、あのせきとうの御供養のありました二日ほどまえのことでござりまして、八がつ二十七日のあけがた、さむらいがたの焼香をおうけになりますと、こんどはおくがたや、お子たちや、腰元衆や、わたくしどもまでをそこへおめしになりまして、「さあ、おまえたちも回向をしておくれ」と仰っしゃるのでござりました。なれどもいざとなりますと、お女中がたのかなしみは又かくべつでござりまして、あゝ、それではいよ/\お城のうんめいがきわまって、とのさまはうちじにあそばすのかとどなたも途方にくれるばかりで、一人もしょうこうの席へすゝもうとはなさりませぬ。このにさんにち寄せ手は一そうはげしくせめてまいりまして、ひるもよるも合戦のたえまはござりませなんだが、けさはさすがに敵もいくらか手をゆるめたとみえまして、お城のうちもそともしんとして、大ひろま