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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
大将ではござりませぬ」と申しあげますと、のぶなが公かっと御りっぷくあそばされ、「おのれ、ふかくにも生けどりになるほどの侍として、ものゝひょうりが分るか」と、鑓のいしづきで石見どのゝあたまを三度おつきになりました。なれどもひるむけしきもなく、「手足をしばられているものをちょうちゃくなされてお腹がいえますか、おん大将のこゝろがけはちがったものでござりますな」とにくまれぐちをたゝかれましたので、ついにお手うちになりました。美作どのはおとなしくしておられましたところが、「その方じゃくねんのみぎりより武勇のほまれたかく、おにがみのようにうたわれながらなんとしておくれを取ったるぞ」との仰せに、「とかく老もういたしまして此の通りのしまつでござります」と申され、「いちめいを許して取りたてゝつかわそう」という御諚でござりましたけれども、「このうえはなんの望みもござりませぬ」と申されてひたすらおいとまをねがわれました。「しからばせがれの新兵衛を世話してやろう」とかさねて御じょうがござりましたときに、美作どの御子息しんべえどのをかえりみられ、「いや/\、御辞退申した