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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

とうや/\しい御あいさつでござりましたので、おくがたもつゝましやかに御えしゃくを返され、せんじんの骨折をおねぎらいなされました。ひでよし公は、「わたくし、このたびさせる軍功もござりませぬのに御褒美としてあさいどのゝ所領をたまわり、もったいなくも長政公のおんあとをつぎますことは弓矢とってのめんぼくでござります、たゞこのうえは何事も古きおしおきにしたがって江北をとりしずめ、亡きおん大将の武ゆうにあやかりとうぞんじます」と申され、「陣中のことゆえさぞ御不じゆうでござりましょう、なんぞお手まわりのしなにても御不足のものはござりませぬか、おこゝろおきのうお申しつけくださりませ」などゝ、それは/\如在のないおことばで、おどろくばかりあいそのよいお方でござりました。ことにひめぎみたちにまで何くれと御あいきょうを振りまかれ、御きげんをとられまして、「お姫さまがいちばんの姉さまでいらっしゃいますか、どれ/\、わたくしに抱っこなさりませ」と、お茶々どのをひざの上へおのせなされおぐしをかいておあげなされて、「おとしはいくつ、おなまえは」などゝおたずねになるのでござりました。