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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

ことは存じませぬけれ共、亡君のおん跡目相続のこと、明地闕国の始末についての御だんごうらしゅうござりました。それが何分にも御めい/\に御りょうけんがちがいますことゝて、なか/\まとまりがつきませんで、引きつゞき毎日のように夜おそくまでおあつまりなされ、ときにはけんかこうろんにも及ばれましたときいております。まあじゅんとうに申しますれば三法師ぎみが御嫡流でいらっしゃいますけれども、御幼少のことでござりますから、いまのばあいは北畠どのをおあとへすえようと仰っしゃる方々もござりますし、そんなことで何や彼やとむずかしくなったのでござりましょう。しかしけっきょく御家督の儀は三ぼうしぎみにきまりましたものゝ、柴田どのとひでよし公とがはじめから折りあいがあしく、こと/″\にあらそわれたようでござりました。それと申しますのが、秀吉公はこんどの功労第一のお方でござりまして、ない/\こゝろをお寄せなさるかた/″\がおられますところに、かついえ公はお家の長老でいらっしゃいますから、御連枝さまをのぞいてはいちばんの上席におつきあそばし、万事につけて列座の衆へ威をふるおうとなされます。