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すもう

相撲

寺田 寅彦

「時事新報」1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,122 字 · 9 页

青空文庫

という記事を書いて、掲載されたことがある。切り抜きをなくしたので、どんな事を書いたか覚えていないが、しかし相撲四十八手の裏表が力学の応用問題として解説の対象となりうることには違いはないので、その後にだれか相撲好きの物理学者が現われ、本格的な「相撲の力学」を研究し開展させて後世に対する古典文献を著述するであろうと思って期待していたが、自分の知る限りまだそうした著書はおろか論文も見当たらない。そんなものを書いても今の日本では学位も取れず金ももうからないためかもしれない。しかし昨今のように国粋的なものが喜ばれ注意される傾向の増進している時代では、あるいはこうした研究もそれほどに異端視されなくてもすむかもしれないと思われる。「囲碁」や「能楽」のように西洋人に先鞭をつけられないうちにだれか早く相撲の物理学や生理学に手をつけたらどうかと思うのである。

相撲の歴史については相当いろいろな文献があると見えて新聞雑誌でそれに関する記事をしばしば見かけるようであるが、しかしそれはたいていいつもお定まりの虫食い本を通して見た縁起沿革ばかりでどこまでがほんとうでどこからがうそかわからないもののような気がする。