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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ
省線電車の射撃手
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页
「ええ、どうしてです。私のベッドに、独り寝ます。妻は、まだありません」
「誰か、当夜ベッドに寝ていられてのを証明する人がありますか」
「ありますまい」
「十時半頃、何か銃声みたいなものをお聞きになりませんでしたか」
「いいえ。寝ていましたので」
「御商売は?」
「JOAKの技術部に勤めてます」
「JOAK! アノ放送局の技師ですか」大江山警部の顔面筋肉がピクリと動いた。
「そうです、どうかしましたか」
「『ラジオの日本』という雑誌を御存知ですか」
「無論知っています」
「貴方のお名前は光吉ですか」
「光吉です」
「大磯に別荘をお持ちですかな」
「いいえ」
「だれかに恨みをうけていらっしゃいませんか」
「いいえ、ちっとも」
「邸内に悪漢が忍び入ったような形跡はなかったですか」
「一向にききません」
大江山警部は、さっぱり当りのない愚問に、自ら嫌気がさして、鳥渡押し黙った。
「省線電車の殺人犯人は、まだ見当がつかないのですか」と反対に笹木光吉が口を切った。
「まだつきません」と警部は、ウッカリ返事をしてしまった。
「銃丸は車内で射ったものですか、それとも車外から射ちこんだものなんですか」
「……」