轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やのしのとい

矢押の樋

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,468 字 · 29 页

青空文庫

浮上って来なかった。

――何処かで見たことのある顔だ。

そう思いながらなお暫く待っていたが、早出仕を控えているので、やがて重太夫は土堤を下りた。

「儂は独りでまいるから、其方は此処で見張っておれ、誰の組で名はなんと申すか、確と取糺して来るのだ」

「畏りました」

「慥めるまで衣類を渡してはならんぞ」

念を押して置いて重太夫は登城した。

彼が役部屋へ入ると、既に出仕していた蔵方の長谷伊右衛門が、待兼ねたように、一通の書状を手にして側へ来た。……重太夫はそれが、数日来待っていた大坂蔵屋敷からの書状だということを直ぐに察した。そして伊右衛門の眼色が明かに、書面の不首尾を語っているのをも見さなかった。

「どう申して来た、矢張りいかぬか」

「よほど奔走した様子でございますが、奥羽諸藩一様に買付けが殺到しておりますのと、肥後、尾州、中国諸国が今年も不作模様とのことで、現銀仕切りならでは到底覚束なしとの文面でございます」

「……やむを得まい」

重太夫はふっと天井を見上げるようにしたが、「……では折返し斯う云ってやれ、資金に就ては公儀へお貸下げを願っている、必ず近日中に為替を送る手筈になるであろうから、いや相違なく送るから、兎に角買付けの約束を纏めて置くように」