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いしをなぐるもの
石を投ぐるもの
宮本 百合子
「文明」1946(昭和21)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,052 字 · 9 页
といい、子の名を呼んで「乗れたか?」と叫びもするだろう。人間の姿がそこにある。今日の、日本の人民の一員たる現実の姿が、よかれあしかれ、そこに現出しているのである。
そういう日常の生活をしている官吏たちが、偶々一人の若い母親とその赤子の上にふりかかった災難をとりあげて警告的処罰をしようと思い立った理由は、どこにあり得たのだろうか。常識ある万人の心が、その母と子とを気の毒と思う場合、その人が処罰の対象となったということで、人民はその人が気の毒だし、災難をうけた方が罪になるとは、さてこわいと、畏縮して、女子供の外出がへると思いつかれでもしたのだろうか。
由紀子という若い母が、どういう用向きで二人の子をひきつれて外出したかが記事の中に語られていないのは遺憾である。けれども、私たちは、自分で自分の必要とした目的のために、動く自由はもっている。交通機関が極端な殺人状態の昨今、ただの気保養に、二人の子をつれて山手線に乗る母は、およそ無いと判断して間違いない。一家の中の細々としたさまざまの用事は食糧事情の逼迫している今日、女を家庭の内部で寸暇あらせないと共に、家庭の外へも忙しく動かせる。