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いしだんにてっかん
石段に鉄管
小川 未明
「文芸戦線」1924(大正13)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,584 字 · 6 页
「なんだい、そんな石段……、減りはしないじゃないか?」
兄のほうの子供は、たまりかねて、十間も歩いて、こちらへきた時分、男のいる屋敷の方を見て叫びました。男が、石段が減る心配以外には、なにも自分たちをしかる理由がなく、また、自分たちはしかられるはずがないと思ったからです。
母親は、やはりうつむいて歩いていました。二人の子供は、それから、しばらく黙って、おとなしく歩いたのです。
あちらに、町の灯が、見えてきました。
もう、日は、暮れてしまって、西の空には一日の余炎もうすれてしまいました。そして、ものの蔭や、建物の蔭に、闇が暈取っていました。水道工事があるとみえて、鉄管が道ばたに、ところどころ転がっています。
三人は、うす暗い、建物の壁にそって歩いていました。そこの電信柱の下にも、長い機械のねているように、大きな鉄管が転がっていたのです。それは、三人が、もたれかかって休むのに、ちょうど適当のものでした。
「ここで、休んでいこう……。」と、母親は、二人の子供にいいました。
「こんな暗いところは、いやだなあ。」と、弟はいいました。
鉄管は、ここばかりでない。