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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
だから一等いけないのはこうした健全分子の内でも比較的純粋な自覚能力を持ったインテリの貧乏意識なのだというのである。失業問題なるものは実はインテリの失業問題だったのである。なる程初めから貧乏な人間がどんなに今更貧乏しても、「問題」になる筈はあるまい。
そこで失業問題の解決は大学や学校を卒業するインテリの就職問題に帰着するわけで、而も夫が更に大学や学校の教育問題に帰することになる。現代の形式主義的、非人格主義的、唯物思想的、非実際的な教育方針が、正に「失業」の原因だということが判ったのである。こうして「失業問題」は凡そ貧乏問題とは関係のない「学制改革」問題に転化する。社会の実情に即した、すぐ様社会に役に立つ教育をやりさえしたら、卒業生の就職難は一遍で解決するというのである。だから「失業問題」というのは貧乏問題でなくて教育精神の問題だったのである。
教育精神の問題をいくら具体化した処で、農村問題が出て来ないことは明らかだ。従って「失業問題」を具体化したものが農村問題だなどと思うと、途方もない計算違いになる。「農村問題」というのは農民の貧乏問題と云ったような失業問題ではなくて、全く農村の救済問題なのだ。