轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しゅくはい
祝盃
菊池 寛
「電氣と文藝」1920(大正9)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,843 字 · 6 页
三人は、また黙って歩いた。一高時代の回想談などは、今の三人の顔触れでは、どれもこれも皮肉になるので、啓吉も久野も話し出さなかった。
それよりも、啓吉は今もっと、話したいことは今度B社から出ることに定まった自分の第一の創作集のことだった。昨日話が定まって以来、自分だけの胸に、蔵って置くのには、あまりに嬉し過ぎることだった。第一の創作集が、世に出るときの嬉しさは、そうした経験のある人でなければ、分らないことであるが。
「僕の本ね。到頭定まったよ。B社から出すことにしちゃった。」
到頭啓吉は、小声で久野にいった。さっきから、話題に困っていたらしい久野は、解放されたように、それに応じた。
「うむ! B社から、それはいゝね。幾ら刷るのだ。」
「二千五百部。」
「そうだろう。僕のも同じだった。装幀はやっぱり右田茂かい。あっさりしていゝね。」
「校正は、自分でやらなきゃいけないのかね。」
「B社なら、初校さえ見て置けば、再校は向うで見て呉れるよ。」
B社からもう二三度、本を出したことのある久野は、先輩ぶっていった。
啓吉は、こうした話が、どんな結果を青木の心に与えているかということが、分り切っていながら、やっぱり止められなかった。