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しゅくはい
祝盃
菊池 寛
「電氣と文藝」1920(大正9)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,843 字 · 6 页
「青木の奴、ちっとも変っていないじゃないか。」
「僕も、それで駭いたのだ。昔とちっとも変っていないね。」と、啓吉も全く同感だった。
「でも、分らないものだね。青木だけが落伍するなんて。」
久野は、そういいながら、ソーダ水をグッと、飲み乾した。
そうだ! 高等学校の末年から、大学に移る頃には、久野も啓吉も、青木に劣らないような、乱暴な出鱈目な生活を続けたものだった。それだのに、危い橋を渡りながら、二人とも真面目に学校を勉強した同窓などよりも、社会的には出世しているといってもよかった。
「俺達は考えて見ると運がいゝんだよ。」
そういいながら、啓吉もソーダ水をグッと飲んだ。
それは、ソーダ水であった。が、二人とも無意識ではあったが、お互いの幸運を祝って、祝盃を挙げている訳だったのだ。