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かみのごとくよわし
神の如く弱し
菊池 寛
「中央公論」1920(大正9)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,929 字 · 28 页
君が人事不省だった二月の二十日頃の事さ。吉岡が僕の家へ突然やって来てね、何の事だろうと思うとね、S家で、君が金に困って居るようなら、いくらでも出そうと云うのだ――」こう云いながら、雄吉は河野の顔を見た。河野は、顔を赤くしながら、かなり緊張した顔付で、雄吉の顔をじっと見詰めて居た。
「無論、僕は断ったよ。君の代りに敢然として断ったよ。僕は、可なり君を侮辱して居ることだと思うのだ。下品な言葉で云えば、金で面をはる、と云ったようなやり方じゃないかね。そう此方で思われないこともないからね……」と、雄吉は河野の憤慨を唆るように、自分自身興奮してしまった。
「僕は、少し怪しからんことだと思ったんだ。よくもそんな事を云って来られたと思ったんだ。今更、そんなことを云って来られる義理じゃないんだろう。」と、云いながら雄吉は、河野がきっと烈しい憤慨を洩らすだろうと待って居た。
が、河野は雄吉の予期とは、全く違って居た。彼は、顔を一層赤くしながら、俯き加減に、じっと畳の上を、見詰めて居たようだったが、その眸は湿んで居るようにさえ、雄吉には思われた。暫くすると、やっと、顔を挙げたかと思うと、