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かみのごとくよわし

神の如く弱し

菊池 寛

「中央公論」1920(大正9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,929 字 · 28 页

青空文庫

それでも、河野には可なりの致命傷であったらしかった。雄吉は、蔭では河野の悪口を真先に云って居る癖に、いざと云う場合になると、一口も云えなかったことが、恥しかった。誰に対してもいゝ子だと思われたいと云うような、利己的な心持から、黙って居たのではないかと、自分で恥しかった。やっぱり、細木や藤田などの方が、あゝした直言をするほど、自分などよりも、河野に対して、熱誠を持って居るのだ。何も云わないで、黙って居た自分が、河野に対して、一番冷淡なのではないかと思った。

が、兎に角、偶然の機みから、少しは場所柄がよくなかったにしろ、河野に対する苦言が与えられたことを、欣ばずには居られなかった。

あれで、少しでも河野の生活が引きしまって呉れゝばいゝと思った。

が、そう思ったのは、雄吉の空しい望であったことが、直ぐ判った。

河野は、細木や藤田などの忠告を『友達が悪い。』というように、うすっぺらに解釈して新しい友達の今井などに云ったので、今井などは細木や藤田などに対して、悪意を持つようになったと云う事実を、雄吉は新聞のゴシップでしった。それを知った時に、雄吉は河野に対する最後の愛想を尽かさずには居られなかった。