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かみのごとくよわし

神の如く弱し

菊池 寛

「中央公論」1920(大正9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,929 字 · 28 页

青空文庫

細木や藤田などの、河野の生活の根柢そのものに触れた非難を、小学校の生徒同士の忠告か何かのように、『誰それさんと遊ぶな。』と云うように解釈して、しかもその誰それさんに、直ぐ云い付けに行く態度を、憤慨せずには居られなかった。

交友が悪いと云うような忠告は、小学生少くとも中学生、大負けに負けて、高等学校の生徒迄位に対してのみ、与えられるべきものだ。もう三十にも近く、創作でもしようと云う人間で、友達の善悪などが問題になるのかと思った。みんな自分自身の問題ではないか。自分の生活の心臓に、指し向けられた非難を、正当に受け入れる勇気がなくて、それを罪も報いもない遊び友達に指し向けようとする河野の男らしくない弱者の態度を、雄吉は賤しまずには居られなかった。こんな事は、自分自身の腹の中で、グッと堪えて居ることではなかろうか、それを自分一人では辛抱がしきれなくて、遊び友達を非難の渦中に捲き込んで、彼等に縋り付くことに依って、細木などの忠告から受くる淋しさや苦悶を、免れようとして居るらしい河野の弱さを、雄吉は、賤しまずには居られなかった。それと同時に、用でもなく、満更知らない仲でもない今井などと、細木や藤田などの間柄を、傷けるような河野のやり方を、雄吉は心の中で可なり烈しく非難した。