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かみサマをうんだひとびと

神サマを生んだ人々

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一一号」1953(昭和28)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,108 字 · 27 页

青空文庫

「気分でも悪いかね」

「いいえ。先生。お願いです。私を東京へ連れてって下さい。先生の二号にして下さい」

「いきなり、そんな」

「だって二号にしていただかないと、生きる瀬がないんです。主人がそうしろッて云うんですもの」

「主人とは?」

「昨夜の男です。私はあの人の二号です」

「安福軒があなたの旦那か!」

「そうなんです。お客さんを連れてくるたび、あの方の二号にしていただけと脅迫するんです。今までの恩返しに多くのことはするに及ばないが、応分の手切れ金をいただいてそれを置いて出て行けと云うんです。どなたかの二号にしていただかないと、もう我慢ができません」

女は思いつめたせいか益々無表情になりヨヨと泣き伏してしまった。

安福軒とはそんな奴かと気がつくと、せっかくの気分を損うこと甚大だ。女も気の毒ではあるが、そんなことに構っていられない。大急ぎで帰り仕度をととのえる。こうなることを予想していたらしく、安福軒にもヌカリはない。

「もうお帰りですか」

と老婆が出てきて勘定書を差出す。明細な勘定書で、昨夜のうちに安福軒がつくっておいたものだ。安福軒の飲食代もむろんその中に書きこんである。