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わたしのつくえ

私の机

岡本 綺堂

「婦人公論」1925(大正14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,912 字 · 4 页

青空文庫

せました。

震災の後、目白の額田六福の家に立退いているあいだは、その小机を借りて使っていましたが、十月になって麻布へ移転する時、何を措いても机はすぐに入用であるので、高田の四つ家町へ行って家具屋をあさり歩きました。勿論その当時のことであるから択り好みはいっていられない。なんでも机の形をしていれば好いぐらいの考えで、十二円五十銭の机を買って来た。これも木材はセンで、それにラックスを塗ったもので、頗る頑丈に出来ているのです。もう少し体裁のよいのもあったのですが、私は脊が高いので机の脚も高くなければ困る。そういう都合で、脚の高いのを取得に先ずそれを買い込んで、そのまま今日まで使っているわけです。その後にいくらか優しの机を見つけないでもありませんが、震災以来、三度も居所を変えて、いまだに仮越しの不安定の生活をつづけているのですから、震災記念の安机が丁度相当かとも思って、現にこの原稿もその机の上で書いているような次第です。

わたしは近眼のせいもありましょうが、机は明るいところに据えなければ、読むことも書くことも出来ません。光線の強いのを嫌う人もありますが、わたしは薄暗いようなところでは何だか頼りないような気がして落着かれません。