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わたしのおぼえがき
私の覚え書
宮本 百合子
「女性」1923(大正12)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,746 字 · 18 页
私は、会う殆ど全部の人が、何か、身についた新しい知識と謙遜な自分への警言を、今度の災害から受けているのを知った。この力は大きい。
今度のことを、廃頽しかけた日本の文化に天が与えた痛棒であると云う風に説明する老人等の言葉は、そのまま私共に肯われない或るものを持っている。けれども、自然の打撃から痛められながらも、必ずその裡から人間生活に大切な何ものかを見出し、撓ず絶望せず溌溂と精神の耀く文明を進めて行こうとする人間の意慾の雄々しさは、その古風な言葉の裡にさえも尚お認め得る。多くの困難があり、苦痛があるにしろ、私共は、とかく姑息になり勝ちな人間の意志を超えた力で、社会革新の地盤を与えられたことを、意味深い事実として知っているのだ。
女性としての生活の上からも、本当に生活に必須なことと、そうでないこととの区別をはっきり知った丈で、あの当時は、一日が五年の教育に価した。余りけばけばしい装飾の遠慮、無力を一種の愛らしさとしていた怯懦の消滅、自分の手と頭脳にだけ頼って、刻々変化する四囲の事情の中に生活を纏め計画する必要に迫られたことは、其時ぎりで失せる才覚以上のものを与えた。