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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 页

青空文庫

美人だぞ。眉目ばかりか気だてもいい。一生の持ちものとして気に入ったから娶ったのだ。ほかに、他意もないわさ」

「冗談はよして下さい」

憤ッとしたらしい。直義は石を離れて突ッ立った。

「今日こそ、お胸の底をたたいておく日と、直義は、足利一族の運命の岐れを負ってお訊きしたのだ。ひとの持つ嫁、その嫂が美人であろうと醜女であろうと、知ッたことか」

「怒ったのか、直義」

「あたりまえだ」

「そう嫉くな。おぬしにも、やがていい嫁が見つかろう」

「何を、いらざるたわ言」

いきなり、直義が胸いたへ突いて来た腕を取って、高氏の体も、諸仆れに、秋草の中に埋まった。

――兄弟喧嘩と、早合点したに違いない。さっきからそこを少し離れた所にぽつねんと坐っていた者は、驚いて人を呼びかけた。だが、声も揚げ得ず、その墨染の袖を頭からかぶって、草むらを這わんばかり、ふるえていた。

つかみ合ったまま、諸仆れに、萩や桔梗を体にかぶった兄弟は、幼少の頃よくやった狆コロの喧嘩みたいに、どっちの手も、首の根を把ったり、襟もとをつかまえて、そのままいつまで、解れようともしなかった。

そのうちに、高氏が、

「ははは、あははは」