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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

「まず、手続きとして……」

と、船田ノ入道は、義貞の顔いろを見ながら言った。

「このところ諸国の武門も、ぞくぞく入洛中のよしですが、武家の着到は、すべて一おう六波羅奉行へ届け出る掟とか。……宿所割りなどの都合もありますれば、ご当家としても、ひとまずは、六波羅の足利へ、お届けの使いを先に走らせておいてはいかがとぞんじますが」

すると、案のじょう、義貞は不快の色をみせて、

「なに、掟……?」

と、船田の顔を目で弾いた。

「この義貞、そんな法規は、ついぞ公文でも見たことはないぞ。――いや道中においては、しばしば、早馬や駅令の高札などが、高氏の名で掲げられてあるのを見うけたが、いつ彼がそのような職権を持ったのか。義貞は、とんと聞きおよんでもおらぬ」

「……御意、ごもっともではござりまする。なれど六波羅奉行の御教書といえば、諸州に渡っておりますし、また入京の軍勢なども、足利の証判を貰わねば、宿所割りも得られぬそうでござりますで」

「他家は他家。なんで義貞が入京するのに、高氏へあたまをさげて、証判などをもらわねばならぬのだ。片腹痛いわ。むしろ、高氏から来るがいい。子の千寿王の礼をも申すべきではないか」