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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

義貞が帰ったあとで、忠顕は、その献上目録の数々に目を通しながら、

「さすがは、北条九代の府」

と、驚嘆していた。

ここぞくぞくと入洛中の凱旋軍も、すべて、から手で入京はしていない。かならず敵地から押収した戦利品の一部は、公庫へ献上し、また宮廷人の要路へ、賄賂されている。が、義貞のもたらしたほどな財宝はかつてなかった。――それに忠顕個人へのみやげとしても、これまで彼のうけた誰のどんな贈り物よりそれはすばらしかった。

「新田は、律義な男とみえる」

忠顕は、すっかり惚れこんだふうだった。――高氏にくらべて、その家柄も劣らず、人品もずっと立派だし――などと彼は義貞をより高く値ぶみしていた。

明けると。約束どおり義貞は、弟の脇屋義助をつれ、

「よろしく、おみちびきを」

と、千種家の門へ来ていた。

参内のためにである。

すでに忠顕から宮中へは「義貞着到」の届けや拝謁の手続きなどが執られてあった。――しかしまだ少々時刻は早いとあって、忠顕は、ふたりを、二条の水亭に入れ、その小憩のあいだに、

「ここだけの話だが」

と、いろんな機微を、義貞への、予備知識として洩らしてくれた。