轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

13 黒白帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页

青空文庫

他日の大挙をもくろんでいた。

尊氏は、高倉の邸に入ってやっと療養につく暇をえた。しかし母の清子は康永元年の十二月に病歿しており、妻の登子や女の鶴王(頼子ともいう)は丹波へ難を避けさせておいたのでここにはいない。あたかも他人の家のような空漠が久しぶりの主人をくるんだのみだった。

そのうえ、彼がまたなく可愛がっていた鶴王が、その冬、亡くなった。尊氏は、それを聞くと、病床ですすり泣いた。こんな父は見たこともないので、義詮は父の変化と体の方が気づかわれ、日ごと高倉を見舞って、とかく政務も軍務も手につかなかった。

すると、翌年の四月。

南朝方にも不幸が起った。棟梁の臣、北畠親房の死であった。この南朝の柱石とも見られていた人の死は、賀名生の行宮を悲しみの底につき落したのみでなく、世上へも敵味方ない哀傷の感をつよくひびかせた。

親房の死を聞いたとき、尊氏の心はありのままにこう疼いた。

「もう南朝方には、恐るべきほどな人はいない」と。

が、それは敵の悲しみを僥倖とするだけでなく、彼自身の心身もばらばらになっての気落ちと共にうめいていたのである。

彼にとっての親房は、夢にまでみる強敵だった。