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あきのはんしゃ
秋の反射
宮本 百合子
「ウーマンカレント」1926(大正15)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,234 字 · 9 页
秋の日を眺めながら、荷車に乗ってゆくという沢や婆と坐っていると、植村の婆さんの心は妙に寂しくなって来た。彼女も、夫に死なれてから全くの一人身であった。村の縫物をして、やっと暮していた。彼女には、青森に甥がいた。今いる家は、町の家作持ちの好意で家賃なしであった。村にも、彼女より立派に縫物の出来る女は、数人いた。植村婆さんは、若い其等の縫いてがいやがる子供物の木綿の縫いなおしだの、野良着だのを分けて貰って生計を立てて来たのであった。沢や婆のいるうちは、彼女よりもっと年よりの一人者があった訳だ。もっと貧しい、もっと人に嫌がられる者があった。その者を、彼女も婆やと呼んで、時には慈悲もかけてやれた。自分が決してどん底の者でないことが感じられていたのだが――沢やの婆が行ってしまったら、後に、誰か自分より老耄れた、自分より貧乏な、自分より孤独な者が残るだろうか?
自分が正直に働いてい、従って真逆荷車で村から出されるようなことにならないのは解り切っている筈なのに、其那気になるのが植村の婆さんには我ながら情けなかった。癪にさわると思っても、何だか淋しい、沢や婆を村に置きたい心持がのかない。