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あきのはんしゃ

秋の反射

宮本 百合子

「ウーマンカレント」1926(大正15)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,234 字 · 9 页

青空文庫

「婆やつき合がひろいから、暇乞いだけでも容易であんめ?」

「早く上らなくちゃならなかったんですがね、一日に二とこは歩けないもんだから」

「そうともよ」

出した茶を、婆はごくり、ごくり、喉に音をさせて飲んだ。それぎり又ぼんやり井戸前の早咲黄菊を眺めている。――

植村婆さんは可哀そうな気がして来た。

「まあお前も、姪のところで悠くり休まっせ。――他人の中よりはいいわな、何てっても血道だもんなあ」

沢や婆は、又返事をしなかった。彼女は手間をかけて信玄袋の口をあけ、中から長田の女隠居のくれた頭巾と着物を出した。

「――これを御隠居さんにいただきましたよ」

植村の婆さんは、婆の慾ばりが憎いような心持がした。人に見せ、此位にしてやる人もあるのだと思わせ沢山貰おうとする。彼女は、さりげなく、

「俺、前に見たわ、御隠居が出して来て、これ婆やにやろうと思うがどうかと相談しなすった――あれだろう?――うん、これよ」

沢や婆は、不服気に仕舞い込んだ。

「――柳田村だっけな、婆やの姪の家は――あすこまで大分有っぺえが――歩けるかい」

「仙二さんが、荷車に乗せてってくれますってよ」

……もう土間の隅では微に地虫が鳴いている。