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あきふかき
秋深き
織田 作之助
「大阪文学」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页
活動見ても、綺麗な女優が出て来たら、眼エつぶっとれ、とこない言いよりまんねん。どだい無茶ですがな。ほんまにあんな女子にかかったら、一生の損でっせ。そない思いはれしまへんか」
じっと眼を細めて、私の顔を見つめていたが、それはそうと、とまた言葉を続けて、
「石油どないだ(す)? まだ、飲みはれしまへんか。飲みなはれな。よう効くんでっけどな。ちょっとも毒なことおまへんぜ」
その時、脱衣場の戸ががらりとあいた。
「あ、来よりました」
男はそう私の耳に囁いて、あと、一言も口を利かなかった。
部屋に戻って、案外あの夫婦者はお互い熱心に愛し合っているのではないか、などと考えていると、湯殿から帰って来た二人は口論をやり出した。
襖越しにきくと、どうやら私と女が並んで歩いたことを問題にしているらしく、そんなことで夫婦喧嘩されるのは、随分迷惑な話だと、うんざりした。
夕飯が済んだあと、男はひとりで何処かへ出掛けて行ったらしかった。私は療養書の注意を守って、食後の安静に、畳の上に寝そべっていた。
虫の声がきこえて来た。背中までしみ透るように澄んだ声だった。
すっと、衣ずれの音がして、襖がひらいた。