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あきふかき

秋深き

織田 作之助

「大阪文学」1942(昭和17)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页

青空文庫

あんた!」

きっとにらみつけた。

その眼付きを見ると、嫉妬深い男だと言った女の言葉が、改めて思いだされて、いまさきまで女と向い合っていたということが急に強く頭に来た。

「しかし、まあ、いずれ……」

曖昧に断りながら、ばつのわるい顔をもて余して、ふと女の顔を見ると、女は変に塩垂れて、にわかに皺がふえたような表情だった故、私はますます弱点を押さえられた男の位置に坐ってしまった。莫迦莫迦しいことだが、弁解しても始まらぬと、思った。男の無理強いをどうにも断り切れぬ羽目になったらしいと、うんざりした。

しかし、なおも躊躇っていると、

「これほど言うても、飲んでくれはれしまへんか」

と男が言った。

意外にも殆んど哀願的な口調だった。

「飲みましょう」

釣りこまれて私は思わず言った。

「あ、飲んでくれはりまっか」

男は嬉しそうに、罎の口をあけて、盃にどろっとした油を注いだ。変に薄気味わるかった。

「あ、蜘蛛!」

不意に女が言って、そして本を読むような味もそっけもない調子で、

「私蜘蛛、大きらいです」

と、言った。

だが、私はそれどころではなかった。私の手にはもう盃が渡されていたのだ。