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あきふかき
秋深き
織田 作之助
「大阪文学」1942(昭和17)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,176 字 · 27 页
汽車が来た。
男は窓口からからだを突きだして、
「どないだ(す)。石油の効目は……?」
「はあ。どうも昨夜から、ひどい下痢をして困ってるんです」
ほんとうのことを言った。
「あ、そら、いかん。そら、済まんことした。竹の皮の黒焼きを煎じて飲みなはれ。下痢にはもってこいでっせ」
男は狼狽して言った。
汽車が動きだした。
「竹の皮の黒焼きでっせ」
男は叫んだ。
汽車はだんだんにプラットホームを離れて行った。
「竹の皮の黒焼きでっせ」
男の声は莫迦莫迦しいほど、大きかった。
女は袂の端を掴み、新派の女優めいた恰好で、ハンカチを振った。似合いの夫婦に見えた。